
戸田 晃 講師
現在の希望だけではなく、一歩先をイメージし、一緒に探していく。
一級建築士、インテリアコーディネーター、宅地建物取引主任者、一級建築士事務所戸田晃建築設計事務所代表
現在の希望だけではなく、一歩先をイメージし、一緒に探していく。
一級建築士、インテリアコーディネーター、宅地建物取引主任者、一級建築士事務所戸田晃建築設計事務所代表
もともと絵を描いたり、ものを作ることが好きだったんです。
漠然と「鉛筆1本で仕事になることがやりたい。」というイメージはありましたが、建築士になろうと思ったのは20代前半の時ですね。ホテルマンの仕事で旅費を貯め、約4ヶ月間、バックパッカーとして帰国日を決めずに西ヨーロッパを旅しました。いろんな美術館巡りをしながら、一日中彫刻をスケッチして過ごしました。向こうでは芸術が生活に身近な存在なんです。入館料も無料だったりして。そこで刺激を大いに受けて帰国し、展覧会に描きためた作品を出展したりしました。
その流れで建築の展覧会にも足を運ぶようになり、“建築士”という仕事を意識し始めたんです。「空間を作る仕事って楽しい。」と思うようになり、建築士を目指して技術専門校へ入学しました。
設計事務所で数年間働きながら二級建築士を取得後、仕事をしながら一級建築士の受験勉強をしました。その頃結婚もしていたので、「とにかく受からなければ!」という責任感から(笑)、暇さえあれば集中して勉強しました。仕事が休みの時は朝から予備校に通い、1日7~8時間は勉強していましたね。受験勉強は大変でしたが、学生という立場で受験に拘束される生活は、意外と楽しかったです。海外ではとにかく自由だったもので(笑)。
受験勉強というのは、独学でもある程度イイところまでは行くんです。ただし、最後の1・2点が勝敗を分けることになる。自分の場合、二級建築士試験は独学でチャレンジしましたが、設計製図の試験の時…ちょっとした迷いで回答を変えてしまったんです。それが敗因となり、悔しい思いをしました。緊張や焦りのせいでパニックになってしまったせいです。たかが1・2点だと思いがちですが、そのボーダーラインにほとんどの人が集中しています。当時学校へ通っていれば、傾向と対策を指導してもらい、こんなミスは防げたかもしれません。
意味は変わりますが学校へ通うという決心をした人は、それはそれでひとつのボーダーラインを超えていると思うんです。ラスト1・2点のために、みんな苦しんで努力するわけですから。
この仕事のおもしろさは、想いを形にしていくことです。お客様の家に対する“想いの重さ”を感じてプレッシャーになることもありますが、逆にその重さを任せてもらえることで、責任感や達成感を味わえます。
ある現場を去る時、お客様に「もう行っちゃうんですか?」と涙ぐまれた際は、本当に嬉しかったです。家づくりはお客様といろんな雑談や会話をすることから始まっています。希望やイメージという形のないものが、具体的なプランを練ることで形になっていく…。
お客様の想いを形にする――現在の希望だけではく、未来も想像して一歩先をイメージしていく――形を伝えて一緒に探していく仕事って大切だと思います。
常に心がけていることは、会話を通してお客様の人物像を掴むことです。潜在的要求を会話力で引き出すことを意識しています。
建築士は設計のスキルや斬新なアイデアが求められるかもしれませんが、たとえ100人が「YES」と言っても、お客様が「NO」だったら、答えはNOなんです。また、お客様は一人じゃない。ご夫婦だったり、ご両親だったり…。いろんな意見を可能な限り予見していきながら、形にしていく。緊張感と責任感や、楽しさと難しさが共存している仕事ですが、「あなたにお願いして良かった」のひと言で疲れが吹っ飛ぶ!それが魅力ですね。
仕事をしながら勉強するのは厳しいとは思いますが、通信教育であればスクーリングといっても月1回程度ですし、仲間と交流しながら前向きに勉強して欲しいと思います。そして、“学生”という立場を思う存分活かし、美術館へ行くなどして感性を磨きながら楽しんで欲しいです。
自分が学生の時、まわりの学生とコミュニケーションすることを発奮材料にして頑張りました。とにかく、“一度就職(仕事)してから勉強をしようと思った人は、意志が強い”ということです。社会の厳しさを知っている方であれば、最後まで努力できると思うので、仲間と一緒に頑張って欲しいと思います。